ラグジュアリー・ミート・ビリヤニ

ラグジュアリー・ミート・ビリヤニ

一頭単位でしか屠畜されない能登ジャージービーフの「うちもも」「シンタマ」「肩ロース」3部位を、3人のビリヤニシェフがそれぞれ独自のアプローチで仕立てるプレミアム肉体験ビリヤニイベント。

これはもともと「バキバキビリヤニバトル」という仲間内のビリヤニ炊き比べイベントからスタートしたのだが、仲間内でごにょごにょやっていても仕方ないと思い、今回からプロのシェフに声をかけてコンセプトも一新した。東京マサラ部あらため東京マサラ研究所を立ち上げて初のイベントとして、価格帯も高く結構な挑戦だったと思う。

今回のイベントは、一言で言えば「とにかくいい肉を使って3人の若手ビリヤニストにビリヤニを炊いてもらい、それぞれのレンズで肉のことを語ってもらうことで、肉の解像度をあげよう」というものだった。

イベントには、肉とスパイスに関する深い造詣を持つ専門家であるシャンカール・ノグチさんを招待し、Loomの戸田さん、貯水葉のゆっちょさん、たびるの松永さんという、それぞれの個性光る三名のシェフを招待。

背景として、最近は明らかにビリヤニという料理がフォーカスされることが増えたということがある。色々なアプローチがあり、自分は原理主義者ではないので極論を言えば美味しかったら何でもいいと思っている。しかし東京マサラ研究所としては、日本にある食材を理解した上で、そのベストな食べ方の一つとしてインド料理的なアプローチを提示したい。

きっかけは5月の渋谷チャイイベント。そもそもは能登の寺西牧場の牛乳をチャイに使わせてもらったことが始まりだった。黄色みがかってボールドなミルクは、加熱には向かなかったけどアイスチャイにしたら上等なスイーツのようになり、めちゃくちゃ美味しかった。

さらに同じ牧場の経産牛を肥育した牛肉を入手することができ、食事メニューとしてビリヤニを提供した。実は普段スーパーで見かける国産牛肉というのは大半が経産牛だったりする。牧場ではペットとして牛を飼っているわけではない。経済動物なのでオス牛は種牛にならなければほとんど価値はなく、雌牛も子供を産ませられて乳を搾られ、何度かお産をしたらまもなく屠畜されるというのが普通。インドなんかはそもそも牛の屠畜を禁止してしまっている(実際にはグレーな領域で屠畜されている)が、それはそれで困るのだ。利益をうまないものを単に抱えていては商売にならないから。

印度乳業プロジェクトを始めてから、そういった人間の業を以前より強く意識するようになった。でもだからこそ、せっかくのミルクの価値を損なわず高付加価値で販売したいし、お肉も特徴を把握して適した食べ方をしたい。文字にしてしまうと陳腐だが、何も無駄にはしたくないと思った。

たんぽぽファームでは経産牛のジャージー牛を別の牧場にうつし、牧草のみでさらに肥育してからお肉にしている。このお肉をリコメンドされて、1kgの肉をオーダーしたら6kgになって届いた時は驚いた。これは普通の小売は行っていないからで、部位ごとに分けられたお肉は小分けにしたら売れなくなってしまう。だからまとまった単位で販売するしかないとのこと。

この肉は、ともかく赤身がおいしい。和牛というとサシが入った斑らの白い肉が有名だが、そういった脂肪が一切ない。部位によっては固くなってしまうので調理が難しいのだが、食べてみれば健康に育てられたことがすぐにわかる。そんなお肉だった。この肉は、加熱した際の「ドリップ(肉汁)の出方」が目を見張るほど多く、香りも立ちやすい。

イベント直前、肉を触ったシェフたちはテンション爆上がりだった。

「あまりに上質な肉すぎて摂取した後に耳の聞こえが良くなった」とか、「テールのスープが麦茶みたいに透明で、上品なコンソメになった」という話も。やばいもんでも入っているんじゃないかというレベルだが、確かにこの肉にはそのような気にさせてくれるポテンシャルがある。

今回は、そんな素晴らしい肉を3人の若手ビリヤニストのレンズによって仕立ててもらった。後半のトークイベントでは3人それぞれから語ってもらったのだが、経歴やいまに至る物語を知るとさらに理解が深まるのではないかと思う。事前にインタビューした話も交えつつ、各シェフのビリヤニとそれに対するアプローチについて記しておく。ビリヤニストは必読。

続きはnoteにて